滋賀県草津市で創業50年以上の税理士事務所を営む税理士の阪口倫造と申します。
今回は、立ち上げた事業が軌道に乗ってきた時に気を付けるべきことについてお話したいと思います。
もくじ
Toggle儲かっている時ほど絶望的観測
まず大切なのは、「事業が軌道に乗ってきても調子に乗らない」ということです。
「今はたまたま運が良いだけ」「追い風が吹いているだけ」と、あえてネガティブに今の好調を捉える姿勢を持ちましょう。
現在、事業がうまく回り始めているのは、あなたが必死の思いで商品を作り出し、磨き、そして集客に力を注いできたからです。
その「必死さ」こそが、今の売上や成果を生み出しています。
だからこそ、「少し儲かったから」といって気を緩めるべきではありません。
「このまま順調にスケールできるだろう」などと、楽観的な未来予測を鵜呑みにしないことが重要です。
理性的には、常に最悪のケースを想定しながら動く。
感情的には、前向きに行動する。
このバランスが経営において非常に重要です。
逆に、理性も感情も前向きすぎると、根拠のない楽観に基づいた「ギャンブル経営」になりがちです。
それを避けるためにも、冷静な悲観と、前向きな行動をセットで持つようにしましょう。
“見栄”にお金を使わない
次に重要なのは、「見栄にお金を使わない」ということです。
少し儲かったからといって、高級車や腕時計などを“見せびらかすため”に購入するのは非常にもったいないです。
あなたの野望は、もっと高く、もっと遠くにあるはずです。
まだまだ会社を大きくしていきたい――そう考えているのではないでしょうか。
たとえ周囲から「スゴい」と言われたとしても、それだけで会社の未来は切り拓けません。
そして、会社の利益を私利私欲や承認欲求のために使ってしまえば、
それを見ている従業員の心は確実に離れていきます。
「そんなことにお金を使う前に、給料を上げてほしい」
そう思われてしまったら、組織の結束力は弱まります。
20代~30代の若手経営者が年商1億からスケールできない理由の一つは、まさにここにあります。
自分のためにお金を使いすぎて、従業員に十分に還元できず、
その結果として、強い人材やリーダーが育ちにくくなってしまうのです。
社長一人の力には限界があります。
10億、20億と売上を伸ばしていくためには、社長以外にも強いリーダーが必要です。
では、そのリーダーをどう作るか。
外部から雇えば時間もお金もかかる上、カルチャーのミスマッチのリスクもある。
だからこそ、社内で育てることが理想的です。
社長の価値観や理念を深く理解した人材が、会社の中核を担ってくれる――それが最も強い組織です。
そして、そのようなリーダーを育てるためには、
社長が本気で、心から、その人と向き合うことが必要です。
スケールさせたいなら、「見栄」にお金を使うのではなく、「未来」に投資しましょう。
原点に立ち返る
そして最後に、「原点に立ち返ること」も非常に重要だと思います。
ここで言う原点とは、そもそも自分はなぜ会社を興したのか。社会にどのようなインパクトを与えたいのか。それはなぜなのか。そしてさらに突き詰めて、自分はなぜ生きているのか、人生で何を成し遂げたいのか、何を幸せと感じ、何を豊かさと定義するのか――そうした根本的な問いと向き合うことを意味します。
なぜそれが大切かというと、事業が軌道に乗り始めると、売上や利益を伸ばすこと自体の難易度は徐々に下がっていきます。キャッシュフローに気をつけながら堅実な経営を続けていれば、資金は増え、会社も少しずつ成長していくでしょう。
多くの人が、起業のきっかけは「稼ぎたいから」だったと思います。最初から高尚な志がある人はむしろ少数派かもしれません。だからこそ、ある程度稼げるようになったとき、ただ「稼ぐこと」だけを目的に走ってきた人は、その先に何を目指せばいいのか分からなくなり、迷子になることがあります。中には、迷った末に、無意味なことにお金を使ってしまい、不幸になってしまう人もいます。
そうならないためにも、まさに今、稼ぎつつあるこのタイミングで、自分の原点に立ち返り、「何のために生き、何のために働くのか」という本質をじっくりと見つめ直すことが大切です。人生観や価値観を明確にし、自分の軸を定める。そうすることで、事業も人生も、より豊かでブレないものになるはずです。
まとめ
事業がうまくいきはじめたときこそ、経営者としての真価が問われます。
「この調子でいけば大丈夫だ」と楽観するのではなく、あえて“絶望的観測”で冷静に未来を見据えること。
そして、得た利益を“見栄”のためではなく、“未来”のために使うという意志を持つこと。
さらに、「何のためにこの会社を始めたのか」という原点に立ち返り、自分の人生観と向き合う時間を持つこと。
この3つの姿勢があるかどうかで、会社の未来は大きく変わっていきます。
短期的な成功ではなく、10年、20年と続く持続的な成長を目指すなら、経営者自身が「ブレない軸」を持ち、「奢らず・焦らず・驕らず」に歩むことが何より大切です。
今こそ、自分自身と会社の“未来”のために、立ち止まって考える時間をつくってみてください。
その時間が、次の10年を支える土台になります。