滋賀県草津市で創業50年以上の税理士事務所を営んでおります、税理士の阪口倫造(さかぐちみちぞう)と申します。
今回は、「事業のスケール」と「社長の幸福の壁」というテーマでお話しいたします。
もくじ
Toggle事業が軌道に乗り始めた頃が、いちばん楽しい
自分で立ち上げた会社の経営は、事業が軌道に乗り始めたタイミングが最も楽しいものです。
売上や利益が徐々に増え、それが安定しそうだと感じられるようになると、未来への期待に胸が躍ります。
この時期には、高尚な経営哲学や志がなくとも、ただ目の前の数字を追っているだけで、十分に幸福を感じられるのです。
安定すると、目的を見失う
ところが、ある程度スケールし、売上・利益が安定し始めると、社長としての喜びや充実感が徐々に薄れていくことがあります。
それは、経済的不安が解消され、これ以上「稼がなければならない」という切迫感がなくなるからです。
そしてその状態で、人生において何を成し遂げたいのかという「ミッション」が定まっていない場合、多くの社長は一時的に迷走し始めます。
マズローの欲求5段階説で言えば、「自己実現欲求」の段階に到達しながらも、それを追求する明確な土台がない状態といえるでしょう。
社長のやる気が失われると、事業はスケールしない
中小企業の業績は、社長のモチベーション次第で大きく左右されます。
軌道に乗ってからも、創業当初のような高い熱量を保てるかどうかが、さらなるスケールの鍵になります。
最初は「何十億、何百億の企業を作ってやる」と大きな野心を抱いていた社長が、自身の欲求がある程度満たされてしまうと、「もうこのくらいでいいか」と満足してしまい、成長が停滞することが少なくありません。
このとき到達できない“次の段階”こそが、いわゆる第2のスケール期です。
第2スケール期とは
第2スケール期とは、「人を雇い、組織と仕組みを整える」段階です。
売上規模で言えば、5億〜10億円ほどを目指すフェーズにあたります。
この段階では、経営者一人の力だけで会社を成長させることは困難になります。優れた人材を採用し、チームで戦う必要があるからです。
スケールと社長の幸福を両立させるには
では、どうすれば会社を持続的にスケールさせながら、社長自身も幸福を感じ続けることができるのでしょうか。
その答えは、**「哲学と経営理念の接続」**にあります。
「自分はどう生きたいのか」「人生で何を成し遂げたいのか」といった根本的な問いに向き合い、そのビジョンを現在の会社経営と重ねること。
この一致があってこそ、会社の成長が社長自身の人生の充実にもつながるのです。
優れた組織づくりは、社長の人格にかかっている
会社を大きく強くするためには、優秀な従業員を採用する必要があります。
しかし、優秀な人材が集まり、活躍するためには、リーダーである社長自身が「人格的に高い水準」にあることが求められます。
マネジメントの技術は、表面的な手法ではなく、人間としての成熟があってこそ効果を発揮するからです。
自己実現の追求が、最終的に会社も社長も高めていく
つまり、社長自身が常に成長し、自己実現を追い続けること。
それこそが真の意味でのマネジメントであり、企業を次のフェーズへと導く推進力になります。
そしてそのプロセスこそが、社長にとって最大の幸福につながるのではないでしょうか。
まとめ
事業の成長と、社長自身の幸福。その両方を実現するためには、「稼ぐ」ことだけでは足りません。
最初は、売上が伸びるだけで楽しい時期があります。しかし、安定してくると、目的や意味を見失いやすくなるのが経営のリアルです。
この壁を越えるには、自分がどう生きたいか、人生で何を成し遂げたいかという「哲学」を持ち、それを会社の経営と重ねていくことが必要です。
そして、会社をスケールさせるには、自分ひとりで頑張る段階から、優れた仲間とともに仕組みをつくる段階へと移行していくことが求められます。
その土台になるのは、社長自身が人として成長し続けること――。
結局のところ、「会社を伸ばすこと」と「自分自身を高めること」は、切り離せないということだと思います。